【週刊AIニュース】【2026年2月第4週】週刊AIニュースハイライト

Anthropic政府利用禁止、OpenAI史上最大の資金調達、Block大規模AI人員削減

今週は、トランプ政権によるAnthropicの連邦政府利用禁止という前例のない事態が発生し、AI業界全体に衝撃が走りました。一方でOpenAIの1,100億ドル調達やBlockの大規模AI人員削減など、AIが社会・経済に与える影響の大きさを改めて印象づける1週間となりました。

主要ニュース

1. トランプ政権、Anthropicの連邦政府利用を全面禁止

2月27日、トランプ大統領はAI企業Anthropicの技術を連邦政府全体で使用停止するよう指示しました。国防長官ピート・ヘグセス氏はAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し、すべての連邦機関と政府請負業者に同社との取引停止を命じました。

この決定の背景には、国防総省とAnthropicの間で激化していたAIの軍事利用を巡る対立があります。国防総省はClaudeを「すべての合法的目的」に使用することを求めていましたが、AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏は自律兵器システムと米国市民の大規模監視への利用を拒否する姿勢を貫きました。ヘグセス国防長官が金曜午後5時1分を期限に設定する異例の展開となりましたが、アモデイ氏は「良心に従って彼らの要求を受け入れることはできない」と表明しています。

この発表の数時間後、OpenAIが国防総省と機密ネットワークへのAIモデル導入で合意したことが明らかになり、AI業界の勢力図が大きく変動しています。

【参考】Trump orders US government to cut ties with Anthropic – ABC News

2. OpenAI、史上最大1,100億ドルの資金調達完了

2月27日、OpenAIは過去最大となる1,100億ドル(約17兆円)の資金調達を完了したと発表しました。企業評価額は7,300億〜8,400億ドルに達し、史上最大規模のプライベート資金調達ラウンドの一つとなりました。

主要出資者はAmazon(最大500億ドル)、ソフトバンクグループ(約300億ドル)、NVIDIA(約300億ドル)です。調達資金はAI開発に必要なデータセンターや半導体、人材確保に充当される予定です。OpenAIは「フロンティアAIが研究から世界規模での日常使用へ移る新しい段階に入っている」と述べ、年内のIPOも視野に入れています。

ChatGPTの利用者増加に伴い計算資源の確保が急務となっており、今回の大規模調達はAI開発競争における同社の優位性を維持するための戦略的な一手と言えます。

【参考】OpenAI raises B in one of the largest private funding rounds in history – TechCrunch

3. Block、AI導入で従業員の約半数を削減

2月26日、決済大手Block(旧Square)は、AI導入に伴い約4,000人の従業員を削減すると発表しました。これは全従業員の約半数にあたり、S&P 500企業における最も大規模なAI起因の人員削減の一つとなります。

共同創業者のジャック・ドーシー氏は「大幅に小さなチームがツールを使うことで、より多くのことをより良くできる」と述べ、「ほとんどの企業は遅れている。1年以内に大多数の企業が同じ結論に達し、同様の構造改革を行うだろう」と予測しました。同氏は複数回の小規模な削減ではなく、一度に深い削減を選択したと説明しています。

市場はこの発表を好感し、Block株は一時24%上昇しました。一方で、AIによる雇用喪失の議論が一層活発化しており、エコノミストからは「AIによる雇用の終末の始まりなのか」という声も上がっています。

【参考】Block lays off nearly half its staff because of AI – CNN Business

4. Anthropic、中国AI3社によるClaudeの「蒸留攻撃」を告発

2月24日、Anthropicは中国のAI企業3社――DeepSeek、Moonshot AI、MiniMax――が組織的にClaudeから情報を抽出する「蒸留攻撃」を行ったと告発しました。

Anthropicの調査によると、3社は合計で約24,000の不正アカウントを作成し、約1,600万回のClaudeとのやり取りを生成しました。特にMiniMaxが最も多く1,300万回以上、DeepSeekは15万回以上の「エージェント推論、ツール使用、コーディング能力」の複製を目的としたやり取りが確認されています。

OpenAIも同様にDeepSeekの「敵対的蒸留」を指摘しており、米国のAI企業と中国企業の間の技術的対立が国家安全保障問題として浮上しています。

【参考】Anthropic accuses DeepSeek, Moonshot and MiniMax of distillation attacks on Claude – CNBC

5. Anthropic、コンピューター操作AI企業Verceptを買収

2月25日、AnthropicはAIスタートアップVerceptを買収したと発表しました。Verceptは画面操作を代行する技術に強みを持ち、AIがコンピューターを人間のように操作する能力を専門としています。

Verceptの共同創業者であるKiana Ehsani氏、Luca Weihs氏、Ross Girshick氏がAnthropicに参画し、Claudeのコンピューター操作能力を直接強化します。Verceptはこれまでに5,000万ドル以上を調達しており、Google CEOエリック・シュミット氏やGoogle DeepMindチーフサイエンティストのジェフ・ディーン氏らが出資していました。

これにより、Claudeはスプレッドシート操作やWebフォーム入力など、より複雑なタスクを人間に近いレベルでこなせるようになると期待されています。

【参考】Anthropic acquires computer-use AI startup Vercept – TechCrunch

6. DeepSeek、中国製チップで開発したマルチモーダルモデルV4を発表へ

2月28日、中国のAIスタートアップDeepSeekが、画像・動画・テキスト生成が可能なマルチモーダルモデル「V4」を3月初旬に発表する予定であることが明らかになりました。

注目すべきは、HuaweiやCambriconなどの中国国内メーカーのチップを使用して開発されている点です。米国による半導体輸出規制の強化が続く中、DeepSeekは米国製チップへの依存を大幅に軽減し、国内半導体エコシステムの強化を目指しています。

DeepSeekは低コスト・高性能モデルで注目を集めており、V4のリリースは再びNASDAQ株価に影響を与える可能性があると指摘されています。

【参考】DeepSeek to Release V4 Multimodal Model Next Week – Pandaily

7. Perplexity、19種のAIモデルを統合する「Perplexity Computer」を発表

2月27日、Perplexity AIは19種類のAIモデルを統合した新サービス「Perplexity Computer」を発表しました。月額200ドルの最高プランで利用可能です。

中央の推論エンジンにはAnthropicのClaude Opus 4.6を採用し、GoogleのGeminiで深層リサーチ、Nano Banana 2で画像生成、Veo 3.1で動画生成、xAIのGrokで軽量タスク、OpenAIのGPT-5.2で長文コンテキスト処理と、バックエンドで19のモデルを協調させる設計です。

データ収集や分析、ウェブサイト作成などの複雑なタスクをクラウド上で自律的に実行できます。Perplexityは広告モデルを廃止し、企業の意思決定を支援する高付加価値サービスに注力する方針を示しています。

【参考】Perplexity launches ‘Computer’ AI agent that coordinates 19 models – VentureBeat

8. メタ、グーグルからAI半導体を大規模レンタル

2月27日、メタがAIモデル開発のためグーグルから数十億ドル規模のAI半導体をレンタルする契約を締結したと報じられました。

AI需要の急増に対応するための投資の一環で、データセンター向けTPU(Tensor Processing Unit)の購入も協議中とされています。グーグルは自社のTPUでNVIDIAのGPUに対抗する戦略を進めており、今回の大型契約はその一環と位置づけられます。

AIインフラの調達競争が激化する中、テック大手間のチップ供給パートナーシップが新たなトレンドとして浮上しています。

【参考】メタ、グーグルからAI半導体レンタル、新モデル開発へ – ロイター

9. 東京科学大・産総研、日本語推論型LLM「Swallow」シリーズを公開

2月26日、東京科学大学と産業技術総合研究所(産総研)は、日本語性能と推論力を両立した推論型LLM「GPT-OSS Swallow」および「Qwen3 Swallow」を開発・公開しました。

これらのモデルはオープンライセンスで提供されており、日本語での高い自然言語処理能力に加え、数学的推論やコーディングタスクにおいても優れた性能を示しています。海外の大規模モデルに頼らず、国産の基盤モデルとして商用・研究利用の両面で活用が期待されます。

日本語LLMの開発は複数のプロジェクトが競合する状況にありますが、Swallowシリーズは推論能力に特化した設計で差別化を図っています。オープンソースによる提供は、国内のAIエコシステム発展にとって重要な一歩と言えるでしょう。

【参考】日本語性能と推論力を両立した推論型LLM「GPT-OSS Swallow」「Qwen3 Swallow」公開 – Ledge.ai

10. 小中高校生の3割が生成AIを日常利用、高校生は46%に

2月26日、こども家庭庁が公表した調査結果により、小中高校生の約3割が生成AIを日常的に利用していることが明らかになりました。特に高校生では46.2%と半数近くに達しています。

調査では、インターネットの利用時間が1日平均5時間27分と過去最長を記録したことも判明しました。動画視聴が最も多い利用目的ですが、生成AIを使った情報検索や学習支援も増加傾向にあります。一方で、生成AIを悪用した不正アクセス事件で高校生が逮捕される事例も発生しており、適切な利用とリテラシー教育の重要性が改めて浮き彫りになっています。

文部科学省のガイドラインでは生成AIの教育活用に慎重な姿勢が示されていますが、現実には子どもたちの利用が急速に広がっており、教育現場での対応が追いついていない状況です。

【参考】小中高校生の3割が生成AIを日常的に利用…ネット利用は1日5時間半 – 読売新聞

業界動向・トレンド

AI軍事利用と企業倫理の衝突

今週最も注目すべきトレンドは、AIの軍事利用を巡る政府と企業の対立が決定的な局面を迎えたことです。Anthropicが自律兵器と大規模監視への利用を拒否したことで、トランプ政権は同社を連邦政府全体から排除するという前例のない措置に踏み切りました。

興味深いのは、OpenAIのサム・アルトマンCEOが「Anthropicのレッドラインに同意する」と表明しつつも、国防総省との契約を締結した点です。AI企業は倫理的原則と事業機会の間で難しい判断を迫られており、各社の対応の違いが業界の勢力図を変えつつあります。この問題は、AI技術のガバナンスにおける重要な先例となるでしょう。

【参考】
OpenAI says it shares Anthropic’s ‘red lines’ over military AI use
Pentagon-Anthropic AI standoff is real-time testing balance of power – CNBC

AIによる雇用構造の転換が現実に

Blockが従業員の約半数を削減するという衝撃的な決定は、AIが雇用に与える影響が「将来の懸念」から「現在進行形の現実」へと移行したことを示しています。ジャック・ドーシー氏の「1年以内に大多数の企業が同様の構造改革を行う」という予測は、業界に大きな波紋を広げました。

一方で、ロイターの分析では、AI投資の拡大に伴い他分野の人員削減を進める企業が増加しており、特に事務・間接部門で影響が顕著です。ただし、エコノミストの中には、AIが人間を補完する側面もあり、特に経験豊富な労働者への影響は限定的との見方もあります。AIと雇用の関係は、今後の最重要テーマの一つとなるでしょう。

【参考】
Are Dorsey’s giant job cuts the start of an AI jobs apocalypse? – CNBC
企業、AI投資シフトで人員削減 – ロイター

巨額資金が集中するAIインフラ競争

OpenAIの1,100億ドル調達、メタとグーグルの大型チップ契約など、今週もAI業界への巨額投資が相次ぎました。OpenAIの資金調達にはソフトバンクグループが約300億ドルを出資し、累計646億ドル・発行済み株式の約13%を保有する主要株主となっています。日本企業がグローバルAI競争の中核に位置づけられていることを示す象徴的な動きです。

S&Pグローバルの分析によると、2026年はモデル開発から推論・応用への投資シフトが加速し、物理インフラの確保が競争力の鍵となっています。国内でも東京科学大学・産総研による日本語推論型LLMの公開など、基盤モデルの国産化に向けた取り組みが進んでおり、グローバルな資金競争と国内の技術基盤強化の両面での動きが注目されます。

【参考】
生成AI資金調達:冷静な回顧と2026年のトレンド – S&P Global
OpenAI、17兆円調達も揺らぐ一強 – 日本経済新聞
Follow-on Investments in OpenAI – SoftBank Group

注目の新サービス・ツール

  • Perplexity Computer(Perplexity AI):19種類のAIモデルを統合し、データ収集・分析・Web作成などを自律実行するエージェントプラットフォーム。月額200ドル
  • Tri 21B Think(Trillion Labs):バックトラッキング構造を持つ強化学習モデル。GPU1枚で動作し、グローバルAI性能評価トップ30入り
  • GPT-OSS Swallow / Qwen3 Swallow(東京科学大学・産総研):日本語性能と推論力を両立したオープンソースの推論型LLM
  • MCP on(AION社):AnthropicのMCP技術を活用し、AIと業務ツールを接続する企業向けサービス
  • HRBPエージェント(BAKUTAN × アビームコンサルティング):人的資本データの分析をAIが支援する人事戦略支援エージェント

まとめと来週の注目ポイント

今週は、トランプ政権によるAnthropicの政府利用全面禁止という前例のない出来事が最大のニュースとなりました。AIの軍事利用における倫理的境界線を巡る議論は、単なる一企業の問題を超え、AI技術のガバナンスにおける歴史的な転換点となる可能性があります。一方でOpenAIの1,100億ドル調達は、AIインフラ競争がさらに激化することを予感させます。

Blockの大規模人員削減は、AIが雇用構造に与える影響の深刻さを改めて浮き彫りにしました。国内では、東京科学大学・産総研による日本語推論型LLMの公開や、小中高校生の3割が生成AIを日常利用しているという調査結果など、日本社会へのAI浸透が着実に進んでいることを示すニュースも目立ちました。技術の進化と社会への影響の両面で、目が離せない週でした。

来週の注目ポイント:
DeepSeek V4正式発表(3月初旬):中国製チップで開発されたマルチモーダルモデルの性能が明らかに
Anthropic政府利用禁止の影響波及:連邦機関や政府請負業者のAI移行がどう進むか
OpenAI国防総省契約の詳細:機密ネットワークへのAIモデル導入の具体的なスコープ
AI雇用影響の連鎖:Block以外の企業でもAI起因の人員削減が発表される可能性
DCON2026関連(5月本選に向けた動き):高専生によるAIスタートアップの最新プロジェクト

AI業界は激動の時期を迎えています。来週も最新ニュースをお届けしますので、ぜひお楽しみに。

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